客席が…… ― 2019/04/07
2018年5月20日(日)
京都市交響楽団第623回定期演奏会
京都コンサートホール
指揮:広上淳一
ピアノ:河村尚子
バーンスタイン:交響組曲「波止場」
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番
バーンスタイン:交響曲第2番「不安の時代」
バーンスタインの「波止場」。静かに始まるが(コープランドを連想した)、まもなく、激しいリズムの音楽が展開される。ショスタコーヴィチの9番も、「不安の時代」も、リズム感がないと苦しい。全曲を聴いてまず思ったのが、「重い演奏になってしまうと、お話にならない曲ばかりだな」ということ。この点、京響は見事なノリ。
「不安の時代」は、井上道義=東フィル、大植英次=大フィルで二度実演に接していたのだが、いずれもピアノは小曽根真。今回、はじめて別のピアニストで聴くことになった。
「おや」と思ったのが、ピアノの配置。東フィル、大フィルとも、協奏曲の場合と同じく、ステージの前面にピアノが置かれていたが、今回の京響は指揮者と向き合うかたち。ソロピアノが重要な役割を担う曲であることは確かだが、「あくまでも協奏曲ではなく、交響曲。ソロピアノがクローズアップされすぎてもよろしくない」という意図が感じられた(真意はわからないが……)。実際、河村のピアノも、悪目立ちすることなく、オケとうまく溶け合っていた。
バーンスタインは、ここぞというときに、指揮棒を持った右手に左手を添えて振ることがあるが、広上さんが何度かこのしぐさを見せていたのには、ちょっと笑ってしまった(尾高さんもよくやってますね)。
20世紀に書かれた曲ばかりというプログラムが災いしたのか(?)、広上=京響コンビの土日の公演にしては、少々空席が目立っていたのがちょっと残念。聴いた人は、トクしたと思うが……
京都市交響楽団第623回定期演奏会
京都コンサートホール
指揮:広上淳一
ピアノ:河村尚子
バーンスタイン:交響組曲「波止場」
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番
バーンスタイン:交響曲第2番「不安の時代」
バーンスタインの「波止場」。静かに始まるが(コープランドを連想した)、まもなく、激しいリズムの音楽が展開される。ショスタコーヴィチの9番も、「不安の時代」も、リズム感がないと苦しい。全曲を聴いてまず思ったのが、「重い演奏になってしまうと、お話にならない曲ばかりだな」ということ。この点、京響は見事なノリ。
「不安の時代」は、井上道義=東フィル、大植英次=大フィルで二度実演に接していたのだが、いずれもピアノは小曽根真。今回、はじめて別のピアニストで聴くことになった。
「おや」と思ったのが、ピアノの配置。東フィル、大フィルとも、協奏曲の場合と同じく、ステージの前面にピアノが置かれていたが、今回の京響は指揮者と向き合うかたち。ソロピアノが重要な役割を担う曲であることは確かだが、「あくまでも協奏曲ではなく、交響曲。ソロピアノがクローズアップされすぎてもよろしくない」という意図が感じられた(真意はわからないが……)。実際、河村のピアノも、悪目立ちすることなく、オケとうまく溶け合っていた。
バーンスタインは、ここぞというときに、指揮棒を持った右手に左手を添えて振ることがあるが、広上さんが何度かこのしぐさを見せていたのには、ちょっと笑ってしまった(尾高さんもよくやってますね)。
20世紀に書かれた曲ばかりというプログラムが災いしたのか(?)、広上=京響コンビの土日の公演にしては、少々空席が目立っていたのがちょっと残念。聴いた人は、トクしたと思うが……
あの熱狂は、いずこへ ― 2019/04/06
2018年5月4日
びわ湖ホール
近江の春びわ湖クラシック音楽祭
指揮:大植英次
ピアノ:アンティ・シーララ
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
グリーグ:ピアノ協奏曲
バーンスタイン:『ウエスト・サイド・ストーリー』より
「シンフォニック・ダンス」
6年ぶり(!)に聴いた大植=大フィルだったが、かつてのような熱狂(オケも、客席も)は感じられず……
びわ湖ホール
近江の春びわ湖クラシック音楽祭
指揮:大植英次
ピアノ:アンティ・シーララ
管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団
グリーグ:ピアノ協奏曲
バーンスタイン:『ウエスト・サイド・ストーリー』より
「シンフォニック・ダンス」
6年ぶり(!)に聴いた大植=大フィルだったが、かつてのような熱狂(オケも、客席も)は感じられず……
渋いプロ ― 2019/04/04
2018年4月20日(金)
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
兵庫県立芸術文化センター管弦楽団第105回定期演奏会
指揮:井上道義
ヴァイオリン:オリヴィエ・シャルリエ
管弦楽:兵庫県立芸術文化センター管弦楽団
ヒンデミット:序曲「エロスとプシュケ」
ヒンデミット:交響曲「画家マティス」
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン協奏曲をメインにもってきたあたり、演奏頻度が高いとはいえないヒンデミットがメインでは定期会員以外の集客が見こめない、という判断が働いた、と見るのは意地が悪すぎるか。井上道義好みの渋いプログラム。演奏は、可も不可もなし。
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール
兵庫県立芸術文化センター管弦楽団第105回定期演奏会
指揮:井上道義
ヴァイオリン:オリヴィエ・シャルリエ
管弦楽:兵庫県立芸術文化センター管弦楽団
ヒンデミット:序曲「エロスとプシュケ」
ヒンデミット:交響曲「画家マティス」
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン協奏曲をメインにもってきたあたり、演奏頻度が高いとはいえないヒンデミットがメインでは定期会員以外の集客が見こめない、という判断が働いた、と見るのは意地が悪すぎるか。井上道義好みの渋いプログラム。演奏は、可も不可もなし。
スプリング・「レクチャー」・コンサート ― 2018/09/14
2018年4月8日(日)
京都コンサートホール
京都市交響楽団 スプリングコンサート
指揮:高関健
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」
デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」
ベルリオーズ:幻想交響曲
「オーケストラが描く物語」というテーマで開かれた、京響のスプコン。高関による「物語」と楽曲との関連の解説を挟むことにより、「単に名曲を並べましたよ」というだけではなく、聴き手の理解をヨリ深めるような内容になっていたのはよかった。京響は、いつもどおりの充実ぶり。安心して聴けた。
京都コンサートホール
京都市交響楽団 スプリングコンサート
指揮:高関健
バーンスタイン:「キャンディード」序曲
サン=サーンス:交響詩「死の舞踏」
デュカス:交響詩「魔法使いの弟子」
ベルリオーズ:幻想交響曲
「オーケストラが描く物語」というテーマで開かれた、京響のスプコン。高関による「物語」と楽曲との関連の解説を挟むことにより、「単に名曲を並べましたよ」というだけではなく、聴き手の理解をヨリ深めるような内容になっていたのはよかった。京響は、いつもどおりの充実ぶり。安心して聴けた。
気迫 ― 2018/09/12
関西フィルハーモニー交響楽団第290回定期演奏会
2018年3月31日(土)
ザ・シンフォニーホール
指揮:飯守泰次郎
ブルックナー:交響曲第8番(1890年稿ノーヴァク版)
飯守=関西フィルのブルックナーシリーズも、8番まで来た。「全曲聴くぞ!!」と気合いを入れていたにもかかわらず、初回の1番の日程を失念してしまったこともあって、2番、3番を聴いただけでここに至ってしまった。もっとも、サイフの問題もあって、飯守指揮でCD化されている曲目(東京シティフィルとの4番、6番、7番)、2004年にすでに関西フィルとの演奏を聴いた4番を避けたということもあるのだが。
金管の負担が大きく、かといって金管が弱いとどうにもならない—ブルックナーの交響曲全般についていえることだが—曲だが、この日の関西フィルは、金管が勇壮に鳴り響き、その点では問題なかった。飯守も、冒頭から唸り声を発してオケを煽り、気合い十分。最後まで気迫を保ったまま駆け抜けた。プレトークで飯守も触れていたが、スコアの指定どおりにハープも3台準備され、関西フィルが総力を挙げて取り組んだことが、そんなところからも窺えた。
ところで、ホルンのエキストラに、大フィルの山本氏が加わっていた。大フィルのブル8は、井上道義指揮のときを除き、常にハース版での演奏だが、この日はノーヴァク版だっただけに、戸惑いはなかったのだろうか。
2018年3月31日(土)
ザ・シンフォニーホール
指揮:飯守泰次郎
ブルックナー:交響曲第8番(1890年稿ノーヴァク版)
飯守=関西フィルのブルックナーシリーズも、8番まで来た。「全曲聴くぞ!!」と気合いを入れていたにもかかわらず、初回の1番の日程を失念してしまったこともあって、2番、3番を聴いただけでここに至ってしまった。もっとも、サイフの問題もあって、飯守指揮でCD化されている曲目(東京シティフィルとの4番、6番、7番)、2004年にすでに関西フィルとの演奏を聴いた4番を避けたということもあるのだが。
金管の負担が大きく、かといって金管が弱いとどうにもならない—ブルックナーの交響曲全般についていえることだが—曲だが、この日の関西フィルは、金管が勇壮に鳴り響き、その点では問題なかった。飯守も、冒頭から唸り声を発してオケを煽り、気合い十分。最後まで気迫を保ったまま駆け抜けた。プレトークで飯守も触れていたが、スコアの指定どおりにハープも3台準備され、関西フィルが総力を挙げて取り組んだことが、そんなところからも窺えた。
ところで、ホルンのエキストラに、大フィルの山本氏が加わっていた。大フィルのブル8は、井上道義指揮のときを除き、常にハース版での演奏だが、この日はノーヴァク版だっただけに、戸惑いはなかったのだろうか。
ひときわ光った大フィル合唱団 ― 2018/09/10
大阪フィルハーモニー交響楽団第516回定期演奏会
2018年3月9日(金)
フェスティバルホール
指揮:井上道義
ピアノ:アレクサンデル・ガジェヴ
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)
バーバー:ピアノ協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」
ショスタコーヴィチ:交響曲第3番「メーデー」
とにかく、大フィル合唱団に尽きた一夜。ロシア語を学んだことのない身で言うのも僭越だが、あまりなじみもなく、また決して易しくはなかったであろうロシア語の歌唱を、よくクリアしたものである。
2018年度の大フィル定期に井上は登場しないが、また、ショスタコを取り上げてくれることを期待したい。
バーバーについては……正直、曲をよく知らないので、保留。
2018年3月9日(金)
フェスティバルホール
指揮:井上道義
ピアノ:アレクサンデル・ガジェヴ
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)
バーバー:ピアノ協奏曲
ショスタコーヴィチ:交響曲第2番「十月革命に捧げる」
ショスタコーヴィチ:交響曲第3番「メーデー」
とにかく、大フィル合唱団に尽きた一夜。ロシア語を学んだことのない身で言うのも僭越だが、あまりなじみもなく、また決して易しくはなかったであろうロシア語の歌唱を、よくクリアしたものである。
2018年度の大フィル定期に井上は登場しないが、また、ショスタコを取り上げてくれることを期待したい。
バーバーについては……正直、曲をよく知らないので、保留。
凡事徹底 ― 2018/09/07
2008年3月4日(日)
びわ湖ホール
R. ワーグナー「ワルキューレ」
指揮:沼尻竜典
演出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣装:ヘニング・フォン・ギールケ
照明:齋藤茂男
音響:小野隆浩
演出補:伊香修悟
舞台監督:幸泉浩司
ジークムント:望月哲也
フンディング:山下浩司
ヴォータン:青山貴
ジークリンデ:田崎尚美
ブリュンヒルデ:池田香織
フリッカ:中島郁子
ゲルヒルデ:基村昌代
オルトリンデ:小川里美
ワルトラウテ:澤村翔子
シュヴェルトライテ:小林昌代
ヘルムヴィーゲ:岩川亮子
ジークルーネ:小野和歌子
グリムゲルデ:森季子
ロスワイセ:平舘直子
管弦楽:京都市交響楽団
びわ湖リング第2弾。2日目の公演に参戦。
演奏がはじまって「あれ?」と思わされたのが、抑え気味の京響の演奏。歌手に配慮してヴォリュームをセーヴしたのか。歌手のほうも、やはり声量は抑え気味のところも。ただ、ここぞという場面では精一杯歌っていることが看て取れた。長丁場だから、これもやむなし。
ハンペの演出は、前年の「ラインの黄金」を踏襲し、プロジェクションマッピングを駆使してワーグナーのト書きどおりに進む。第3幕では、ワルキューレたちが天馬に乗って駆けてくるところなどをCGで表現していたが、これは少々、マンガチックにも感じられた。
演奏も演出も、やるべきことをきちんとやりとげた、という、午後のひととき。
びわ湖ホール
R. ワーグナー「ワルキューレ」
指揮:沼尻竜典
演出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣装:ヘニング・フォン・ギールケ
照明:齋藤茂男
音響:小野隆浩
演出補:伊香修悟
舞台監督:幸泉浩司
ジークムント:望月哲也
フンディング:山下浩司
ヴォータン:青山貴
ジークリンデ:田崎尚美
ブリュンヒルデ:池田香織
フリッカ:中島郁子
ゲルヒルデ:基村昌代
オルトリンデ:小川里美
ワルトラウテ:澤村翔子
シュヴェルトライテ:小林昌代
ヘルムヴィーゲ:岩川亮子
ジークルーネ:小野和歌子
グリムゲルデ:森季子
ロスワイセ:平舘直子
管弦楽:京都市交響楽団
びわ湖リング第2弾。2日目の公演に参戦。
演奏がはじまって「あれ?」と思わされたのが、抑え気味の京響の演奏。歌手に配慮してヴォリュームをセーヴしたのか。歌手のほうも、やはり声量は抑え気味のところも。ただ、ここぞという場面では精一杯歌っていることが看て取れた。長丁場だから、これもやむなし。
ハンペの演出は、前年の「ラインの黄金」を踏襲し、プロジェクションマッピングを駆使してワーグナーのト書きどおりに進む。第3幕では、ワルキューレたちが天馬に乗って駆けてくるところなどをCGで表現していたが、これは少々、マンガチックにも感じられた。
演奏も演出も、やるべきことをきちんとやりとげた、という、午後のひととき。
2017コンサートベスト3 ― 2017/12/30
今年のコンサート参戦は10回にとどまったが、その中からベスト3を挙げてみる。
1位 2月18日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団第505回定期演奏会
井上道義の首席指揮者としての最後の定期。終始高い緊張感が維持された、わたしが経験した大フィルのベストコンサート。
2位 3月5日 びわ湖ホール
R.ワーグナー「ラインの黄金」
いよいよスタートを切った「びわ湖リング」。上々の滑り出しとなった。沼尻竜典=京響の演奏はもちろんだが、ミヒャエル・ハンペによる、プロジェクションマッピングを駆使したワーグナーのト書きに忠実な演出も注目された。来年の「ワルキューレ」以降も期待大。
3位 11月22日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団第513回定期演奏会
今シーズンよりミュージック・アドヴァイザーに就任し、来期より音楽監督の座に就く尾高忠明の指揮によるオール・モーツァルト・プログラム。厚めの響きながら見通しがよく、各パートの音が明瞭に聴き取れた。
番外:7月14日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団創立70周年記念
第55回大阪国際フェスティバル2017
バーンスタイン
シアターピース「ミサ」
— 歌手、演奏家、ダンサーのための劇場用作品 —〈新制作〉
井上道義総監督・指揮・演出によるチャレンジングなプログラム。意義のある試みだったし、内容も興味深かったが、何度か再演されないとその真価は理解できないかも。
……という次第で、これだけだと大フィルが健闘した1年のようだが、全体としては、今年も京響が最も充実していたように思う。来シーズンのプログラムを見ていても、当分、関西のプロオケは京響の天下が続きそうである。
1位 2月18日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団第505回定期演奏会
井上道義の首席指揮者としての最後の定期。終始高い緊張感が維持された、わたしが経験した大フィルのベストコンサート。
2位 3月5日 びわ湖ホール
R.ワーグナー「ラインの黄金」
いよいよスタートを切った「びわ湖リング」。上々の滑り出しとなった。沼尻竜典=京響の演奏はもちろんだが、ミヒャエル・ハンペによる、プロジェクションマッピングを駆使したワーグナーのト書きに忠実な演出も注目された。来年の「ワルキューレ」以降も期待大。
3位 11月22日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団第513回定期演奏会
今シーズンよりミュージック・アドヴァイザーに就任し、来期より音楽監督の座に就く尾高忠明の指揮によるオール・モーツァルト・プログラム。厚めの響きながら見通しがよく、各パートの音が明瞭に聴き取れた。
番外:7月14日 フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団創立70周年記念
第55回大阪国際フェスティバル2017
バーンスタイン
シアターピース「ミサ」
— 歌手、演奏家、ダンサーのための劇場用作品 —〈新制作〉
井上道義総監督・指揮・演出によるチャレンジングなプログラム。意義のある試みだったし、内容も興味深かったが、何度か再演されないとその真価は理解できないかも。
……という次第で、これだけだと大フィルが健闘した1年のようだが、全体としては、今年も京響が最も充実していたように思う。来シーズンのプログラムを見ていても、当分、関西のプロオケは京響の天下が続きそうである。
「先生、ハタチの尾高のモーツァルトを聴いてください」「まあ、悪くないね」 ― 2017/12/14
2017年11月22日(水)
フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団
第513回定期演奏会
指揮:尾高忠明
W.A.モーツァルト「交響曲第39番・40番・41番」
プログラムに、「やっとハタチ!」と題された、この日の指揮者・尾高忠明のエッセイが掲載されている。
大学卒業を控えた尾高が師・齋藤秀雄に呼び出され、一応、「おめでとう」と祝福されはしたものの、「22歳では音楽はわからない」「30歳になるまでは仕事も来ない」「30歳になったら選ばずに仕事しろ」「40歳になったら一つ一つの仕事の内容を高めていけ」「50歳になってようやく指揮者としてヨチヨチ歩きがはじめられる」と延々訓戒を与えられ、やけ酒をあおることになった、というのである。
ちなみにこのエピソードはかつて、日フィルの楽員が運用していたウェブサイトでも紹介されていたのだが、現在、このサイトはなくなっている。そこでの話によると、齋藤の訓示(?)には、同期卒業の井上道義も同席していたという。
さてさて……この日のプログラムを見たとき、「えっ、フェスティバルホールでオール・モーツァルト?」と思ってしまったことを白状しなければならない。ホールの規模を考えるなら、ザ・シンフォニーホール、いずみホール(後者がベストであろう)でやるべきプログラムでは、と(もっとも、1996年1月19日に、若杉弘指揮の旧フェスティバルホールの定期で同じプログラムを取り上げたことがあったようだが)。ホールの広さもあってか、最近のモーツァルト演奏では比較的珍しい、39番・41番は14型、40番は10型という大きめの編成と相成った。
しかし、演奏がはじまってみると、バランスのよさに驚かされた。厚めの響きで、モーツァルトというよりも、むしろベートーヴェンを連想させるところもあったが、とにかく、各パートの音が明瞭に聞こえてくる。特に、最初の39番にこの傾向は顕著で、これほど明晰なモーツァルト演奏は、はじめての経験だった。当分、モーツァルトのシンフォニーは聴かなくてもいい、と感じたほど。
さて、齋藤秀雄は「モーツァルトが一番好き」と公言し、演奏に際してはそのスタイルに注意を払うよう促していたという(中丸美繪『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』新潮文庫、2002年、451ページ)。尾高は前述のエッセイで指揮者は50歳から、という齋藤の教えを心に抱いてきた自分は今月70歳になり、指揮者としての成人式を迎えた、と語り、最後に「先生、ハタチの尾高のモーツァルトを聴いてください」と呼びかけている。おそらく齋藤は、「まあ、悪くないね」と、齋藤としての最高の賛辞を送ったのでは、と想像(妄想?)する。
フェスティバルホール
大阪フィルハーモニー交響楽団
第513回定期演奏会
指揮:尾高忠明
W.A.モーツァルト「交響曲第39番・40番・41番」
プログラムに、「やっとハタチ!」と題された、この日の指揮者・尾高忠明のエッセイが掲載されている。
大学卒業を控えた尾高が師・齋藤秀雄に呼び出され、一応、「おめでとう」と祝福されはしたものの、「22歳では音楽はわからない」「30歳になるまでは仕事も来ない」「30歳になったら選ばずに仕事しろ」「40歳になったら一つ一つの仕事の内容を高めていけ」「50歳になってようやく指揮者としてヨチヨチ歩きがはじめられる」と延々訓戒を与えられ、やけ酒をあおることになった、というのである。
ちなみにこのエピソードはかつて、日フィルの楽員が運用していたウェブサイトでも紹介されていたのだが、現在、このサイトはなくなっている。そこでの話によると、齋藤の訓示(?)には、同期卒業の井上道義も同席していたという。
さてさて……この日のプログラムを見たとき、「えっ、フェスティバルホールでオール・モーツァルト?」と思ってしまったことを白状しなければならない。ホールの規模を考えるなら、ザ・シンフォニーホール、いずみホール(後者がベストであろう)でやるべきプログラムでは、と(もっとも、1996年1月19日に、若杉弘指揮の旧フェスティバルホールの定期で同じプログラムを取り上げたことがあったようだが)。ホールの広さもあってか、最近のモーツァルト演奏では比較的珍しい、39番・41番は14型、40番は10型という大きめの編成と相成った。
しかし、演奏がはじまってみると、バランスのよさに驚かされた。厚めの響きで、モーツァルトというよりも、むしろベートーヴェンを連想させるところもあったが、とにかく、各パートの音が明瞭に聞こえてくる。特に、最初の39番にこの傾向は顕著で、これほど明晰なモーツァルト演奏は、はじめての経験だった。当分、モーツァルトのシンフォニーは聴かなくてもいい、と感じたほど。
さて、齋藤秀雄は「モーツァルトが一番好き」と公言し、演奏に際してはそのスタイルに注意を払うよう促していたという(中丸美繪『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』新潮文庫、2002年、451ページ)。尾高は前述のエッセイで指揮者は50歳から、という齋藤の教えを心に抱いてきた自分は今月70歳になり、指揮者としての成人式を迎えた、と語り、最後に「先生、ハタチの尾高のモーツァルトを聴いてください」と呼びかけている。おそらく齋藤は、「まあ、悪くないね」と、齋藤としての最高の賛辞を送ったのでは、と想像(妄想?)する。
正攻法 ― 2017/11/09
2017年10月15日(日)
兵庫県立芸術文化センター(PAC)KOBELCO大ホール
広上淳一指揮
京都市交響楽団
ヴァイオリン:ボリス・ベルキン
ウォルトン:「スピットファイア」前奏曲とフーガ
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第1番
広上=京響のブラームス交響曲シリーズ第2弾。勤務の都合で10月13日(金)の京響定期に行けなかったため、同一プログラムのPACでの公演を聴く。京響をPACで聴くのははじめて。
最初のウォルトンは、もとが映画音楽だけあって「わかりやすい」が、それだけに目の前をあっさり通り過ぎてしまい、印象に残りにくい感が。2曲目のショスタコは、ベルキンの技芸全開。
メインのブラームス。何も足さない、何も引かない正攻法、遅めのテンポで堂々と押し切る。1楽章のリピートは忠実に実行。スタミナを心配したが、そこはびわ湖ホールでのワーグナー演奏で鍛えられた京響だけに、乱れることなく乗り切った。
なお、当日は雨だったのだが、西北(阪急西宮北口駅)とホールが直結しているので、現地では濡れることなく移動できたのが何よりありがたかった。2005年の3月、ザ・シンフォニーホールでの大フィル定期(大植英次指揮、マーラー「悲劇的」)に向かう途中、ゲリラ豪雨に襲われて濡れねずみになってホールに到着、「コレがホントの悲劇的や……」と、しょーもないことを考えたことがあったのを思い出したりしたのであった。
兵庫県立芸術文化センター(PAC)KOBELCO大ホール
広上淳一指揮
京都市交響楽団
ヴァイオリン:ボリス・ベルキン
ウォルトン:「スピットファイア」前奏曲とフーガ
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
ブラームス:交響曲第1番
広上=京響のブラームス交響曲シリーズ第2弾。勤務の都合で10月13日(金)の京響定期に行けなかったため、同一プログラムのPACでの公演を聴く。京響をPACで聴くのははじめて。
最初のウォルトンは、もとが映画音楽だけあって「わかりやすい」が、それだけに目の前をあっさり通り過ぎてしまい、印象に残りにくい感が。2曲目のショスタコは、ベルキンの技芸全開。
メインのブラームス。何も足さない、何も引かない正攻法、遅めのテンポで堂々と押し切る。1楽章のリピートは忠実に実行。スタミナを心配したが、そこはびわ湖ホールでのワーグナー演奏で鍛えられた京響だけに、乱れることなく乗り切った。
なお、当日は雨だったのだが、西北(阪急西宮北口駅)とホールが直結しているので、現地では濡れることなく移動できたのが何よりありがたかった。2005年の3月、ザ・シンフォニーホールでの大フィル定期(大植英次指揮、マーラー「悲劇的」)に向かう途中、ゲリラ豪雨に襲われて濡れねずみになってホールに到着、「コレがホントの悲劇的や……」と、しょーもないことを考えたことがあったのを思い出したりしたのであった。